傘が増える事件
今朝いつも通りに出勤したんですよ。子どもに飯食わせて歯磨きさせて、着替えさせて見送って。んで俺も歯磨きして着替えて眠いなぁと思いながら電車に乗るっていうふつーの出勤。
で、自宅の最寄り駅のJRの在来線で博多駅に行って地下鉄に乗り換えるんです。
もちろん今日も普通にそうやって地下鉄に乗り換えたんですね。
みんな通勤時間なんで地下鉄の車両のなかでギュウギュウともみくちゃにされながら電車に揺られるわけです。
まぁいつもと違うといえば雨が降ってたんで傘を持ってたくらいですかね。あとは普段と一緒。キャメルのダッフルコートで防寒して、あの、ボタンは象牙みたいなやつに合皮の紐を引っ掛けるやつ着て、肌着は上下UNIQLOのヒートテックですね。
んで満員の地下鉄に揺られて職場の最寄り駅に着き、気が乗らないまま職場方面へと人波に流されるわけです。
てく てく てく
と。
………?
なんか歩くたび、つま先に何か当たるんですね。
んで、人波に流されながら、それとなく視線を足元に向けたんですけど
………。
人って、想像の斜め上をいく出来事に遭遇すると時間が止まるんだと思います。
立ち止まっちゃったんで、すごく通勤してる人の邪魔になったと思います。
何人かにぶつかられたような気もします。
だって…状況がよく理解出来なかったんですよ。
今日は雨だったから傘を持ってきました。
ずっと左手で持っていました。
その時、足元に視線を向けた時、ダッフルコートの1番下のボタンの所に傘が掛けられてたんです。
誰のものか分からない傘が。
いや、あの…
マジか…
それしか言葉が出ませんでした。
傘が…左手には俺の傘…コートにも傘…
傘が…
増えた!!!
3秒くらい色々考えました。何故傘が増えたのか…
‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎
ヤベー!ジンの仕業だ!早く行かねーと!ラーーン!
ヤバイ窃盗と間違われる!これ、触れてもないのに痴漢呼ばわりされるような無実の人を陥れる新しいヤツだ!
走った!人を掻き分けダッシュ!
地下鉄の階段を駆け上がり改札にいる駅員に「これ!電車降りたらココに掛かってました!知らない人のです!持ち主が来たら!返してください!」
駅員は嘲笑うかのような視線、関係ない‼︎俺は見ず知らずの傘を手放した瞬間、今日が平和であることを確信しました。